2026年9月27日
「直った」で終わらせない。ひと声で単価が上がる理由
網戸を1枚張り替えて、建付けの悪い戸を1つ直して。作業を終えて「はい、これで大丈夫です」と道具を片付けて帰る。この対応そのものは、決して悪くありません。むしろ、頼まれたことをきちんとやり切る姿勢はお客さんの信頼につながります。
ただ、もったいないのはここで会話が終わってしまうことです。せっかく家の中まで入って、暮らしぶりを間近で見られる時間があるのに、それを「直すだけ」で使い切ってしまっている工務店さんは意外と多いのではないでしょうか。
「直す」と「良くする」はまったく別の話
お客さんが最初に頼むのは、たいてい「困っていること」です。網戸が破れた、戸が閉まりにくい、水漏れがする。これは「直す」の話です。
でも、家の中には「困ってはいないけれど、気になっている」ことがたくさんあります。「そういえば冬場、この窓際が寒いんですよね」「お風呂の換気扇の音が最近うるさくて」「そろそろ外壁も気になってるんだけど、何から手をつけたらいいのか」。こうした話は、頼まれてもいないので、お客さんの方からは切り出しにくいものです。
だからこそ、作業のついでに「ほかに気になるところはありませんか」と一言聞くだけで、直すだけでは出てこなかった相談が出てくることがあります。これが「良くする」提案の入口です。
押し売りにしないための、聞き方の順番
ここで大事なのは、聞いたことをすぐ売り込みに変えないことです。「ついでに見積もりましょうか」と前のめりになると、お客さんは身構えてしまいます。順番はこうです。
1. まず聞くだけに徹する 「そういえば、他に気になるところってありますか?」 「この季節、困ることって何かありますか?」
この時点では提案せず、相槌を打ちながらメモを取るくらいの気持ちで十分です。急かさず、雑談の延長として聞くのがコツです。
2. 聞いた話を「選択肢」として持ち帰る その場で金額を出す必要はありません。「なるほど、それだと〇〇という方法と、△△という方法がありますね。今度、簡単な資料をお持ちしますね」と伝えて、いったん持ち帰ります。その場で即決を迫らないことが、押し売りに見せない一番のポイントです。
3. 後日、選択肢を並べて渡す 「絶対にこれをやってください」ではなく、「こういうやり方もあります、こういうやり方もあります、費用感はこのくらいです」と並べて渡す。決めるのはお客さんです。工務店側は「知らなかった選択肢を教えてくれる人」というポジションに立てれば十分です。
言葉例:聞くとき・提案するとき
聞くときは、困りごとを引き出す聞き方を意識します。
- 「築何年目くらいになりますか? そのくらいだと、〇〇が気になり始める方が多いんですよ」
- 「冬と夏、それぞれ困ることってありますか?」
提案するときは、決めつけない言い方にします。
- 「今すぐでなくて大丈夫です。頭の片隅に置いておいてもらえれば」
- 「これは絶対おすすめというより、選択肢の一つとして知っておいてほしくて」
こうした言い方は、値段の安さではなく「この人は暮らしを見てくれている」という印象を残します。これが、次の仕事や紹介につながる土台になります。
小さな工事ほど、聞く時間がある
大きな改修工事の現場は、段取りに追われて雑談どころではないことが多いものです。むしろ網戸や建付け直しのような小さな修理こそ、時間にも心にも余裕があり、お客さんとゆっくり話せる貴重な機会です。修理のたびに「聞く→持ち帰る→選択肢を渡す」を繰り返していけば、1件の小工事が次の相談の入口になっていきます。
なお、費用感を伝える際は「だいたいこのくらい」と幅を持たせ、正式な金額は現地確認の上でお伝えする、という姿勢を崩さないようにしましょう。資材の価格なども変わりやすいので、最新の情報は都度ご確認ください。
まとめ
- 修理の作業だけで終わらせず、「他に気になるところは?」とひと声かける
- その場で売り込まず、いったん持ち帰って選択肢として渡す
- 決めるのはお客さん。工務店は選択肢を教える立場に徹する
- 小さな修理ほど、ゆっくり話を聞ける貴重な時間だと捉える
次にお伺いする現場では、片付けの前にひとこと、暮らしの困りごとを聞いてみませんか。